三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など大手銀行5グループの2014年4~9月期連結決算が14日、出そろった。最終利益は海外部門が好調な三菱UFJなど3グループで増えた一方、みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループは減少。超低金利で国内融資の「利ざや」が縮小するなか、海外などに収益源を確保できるかどうかで差が生じている。
三菱UFJの最終利益は9%増の5787億円と、4~9月期では2期連続の増益になった。みずほは17%減の3552億円だった。5グループ合計の最終利益は2%減の1兆6300億円になったが、なお高い利益水準を保っている。
国内の収益環境が厳しかった点は各行とも共通している。貸出金利は低下傾向にあり、融資や国債などの運用利回りと、人件費などを含む資金調達原価の差を示す「総資金利ざや」は三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行がマイナスになった。日銀の追加金融緩和で「下期も金利低下を伴う利ざやの縮小を想定する必要がある」(三菱UFJFGの平野信行社長)。
住宅ローンも4月の消費増税後の需要減を受け、金利の引き下げ競争が激しい。3メガ銀グループでは主要な証券子会社の最終利益も4~6割程度減り、連結ベースの収益を圧迫した。5グループ傘下の銀行の投資信託販売額も好調だった昨年の反動で13%減った。
それでも三菱UFJが増益を確保したのは、海外部門の収益貢献が大きいためだ。本業のもうけを示す実質業務純益は前年同期比で523億円増えたが、内訳をみると昨年買収したタイのアユタヤ銀行が473億円、米国などの国際部門が274億円の押し上げ要因になり、個人向け業務の不振などを補った。
資金需要が旺盛な海外は国内より貸出金利が高く、他行も海外部門の強化を急ぐ。三井住友銀行は9月末までの1年間で海外の融資残高を250億ドル(17%)増やした。アジアや米州向けが増え「下期も同程度の伸びを見込む」(三井住友FGの宮田孝一社長)。
みずほFGは傘下の信託銀行の不動産仲介や証券会社の新規株式公開(IPO)支援など手数料ビジネス拡大を目指す。佐藤康博社長は「銀行と信託、証券の連携は相当な勢いがついてきた」と語る。りそなホールディングスも投資信託や保険販売に力を入れる。
収益源の多様化を図る邦銀勢だが、国際展開で先行する欧米の大手銀との差は大きい。米JPモルガン・チェースの最終利益は4~9月合算で約115億ドル(約1兆3000億円)。15年3月期の最終利益見通しでは三井住友トラスト・ホールディングスを除く4グループが減益を見込み、収益向上は道半ばだ。
2014/11/15 日経新聞より