全国銀行協会の平野信行会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は16日の記者会見で、国内の銀行が他行向けに振り込める時間を延ばす方針を正式に表明した。土日や祝日も送金できるよう検討する。入出金が頻繁にある小売業などの資金繰りがやりやすくなる利点がある。平日の午後3時を過ぎると原則受け付けなかった手形取引などの商慣行が変わる可能性もある。

銀行間で振り込みなどの送金をする場合には、全銀協が整備した「全銀システム」をつかってデータをやりとりする。システムの稼働時間は平日の午前8時半から午後3時半までで、午後の稼働時間を延長するのはシステムができた1973年以来で初めてだ。

全銀協は16日、「平日夕方から夜」と「土日祝日」には相応のニーズがあるとしたうえで(1)現行のシステムで全行が延ばす(2)新システムをつくり土日祝日も含めて延ばす――という2案をまとめた。

平日1時間程度の延長であれば現行システムでも可能で、早ければ2015年度にも実現する見通しだ。新システムをつくって土日や祝日も送金できるようにするには3年ほどかかりそうだ。平野氏は「ネットショッピングなどの利便性が増す。年末までに方向性を決める」と述べた。

英国やシンガポールでは24時間、365日送金できる仕組みがある。富士通総研の松原義明シニアコンサルタントは「リアルタイム決済は世界の潮流。国内のお金の流れが変わる可能性がある」と話す。

どんな影響があるのだろうか。いまは金曜日の午後4時に振り込んでも相手の口座に届くのは週明けの月曜日になる。このため、手形の不渡りを判断する時間は午後3時がひとつの目安になっている。この時間が変われば、資金繰りに苦しむ企業は午後3時以降や土日も金策に走れるようになる。週末にまとまったお金が動く流通業やサービス業では土日に卸売業者やメーカーと決済できるようになり、各企業の資金調達などに大きく影響する可能性がある。

中小企業にもメリットがある。ネット通販はクレジットカード決済が主流だが、システムをつくるのにコストがかかる。銀行振り込みを使えば、中小企業でもネット通販に参入しやすくなる。

個人も公共料金の支払いや仕送りで銀行振り込みを使っている。災害や冠婚葬祭などで急な送金が必要になったときに対応しやすくなる。「デイトレーダーが証券口座に入金しやすくなる」(ネット銀行)との声もある。

世界的には米ペイパルやビットコインなど非銀行による決済手段が広がりつつある。英国の大手行は相手の携帯電話番号を指定するだけで送金できるサービスを始めた。日本でもネット専業のじぶん銀行や楽天銀行が携帯番号やフェイスブックの友達に送金できるサービスを手掛けているが、まだ一部だ。平野氏は「IT(情報技術)を活用するさまざまな事業者との競争を念頭に置く必要がある」と危機感を示す。

決済時間の延長には課題もある。新システムの構築には一定の費用がかかるため、手数料が上乗せされる可能性がある。企業側も経理担当者を夕方以降や土日に配置するなどの対応が必要になりそうだ。24時間化した場合、深夜は不正送金に気づきにくく、リスクが大きいとの見方もある。

2014/10/17 日経新聞より

今回の振り込み時間の延長に関しては、通常の銀行業務による口座間振り込みでの話であり、バンクイックを含むカードローンの受付・営業時間等については特に変更は無いものと見られます。従来からバンクイックの取り扱い時間は銀行窓口の営業時間より長くなっており、その利便性に変化はありません。